自宅できのこを栽培するのに必要な設備、道具一覧
★ここでご紹介する内容は、例によってもれ郎の成長とともに更新する予定です。
どうも、元きのこ研究者のもれ郎です。今日はきのこ栽培に必要な道具について触れていきたいと思います。
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きのこ栽培に興味があるみなさん、素敵です。みなさんはどういう過程できのこ栽培を知ったのでしょうか。おそらく、「きのこ栽培キットが面白かったから!」という方が多いのではないでしょうか。
ところが、ステップアップして「種菌を使ってきのこを栽培しよう!」と思うと、実行のハードルがぐんとあがります。なぜでしょう。これは、きのこ栽培の工程を理解すると明らかになります。
ともあれ、自宅できのこ栽培を1から始めようとすると、栽培キットを使う分にはまず使わなかった特別な設備、道具が必要になってきてしまいます。しかし、だからこそ「きのこ栽培のおもしろさ、奥深さ」というのが見えてきます。
みなさんは、きのこ菌糸が1日でどれくらい伸びるか知っていますか。そして、培地の種類や培養の方法によって、きのこ菌糸の伸びるスピードや、収穫量までもがまるっきり変わってくることを知っていますか。
本ブログ「さかなきのこ」で実践するきのこの栽培方法は、まさにこういった創意工夫が活きてきます。
みなさんはこんなブログにたどり着くような方ですから、普通のやり方に飽き足らない、創作活動が得意なDIY精神あふれる強者なのでしょう。そんなみなさんをはめ込んでしまうような魅力を、きのこ栽培はもっているのです。
ともかく、本稿では、「これからきのこ栽培を始めてみようかな……」と思っている方に向けて、必要な設備、道具をご紹介いたします。
きのこ栽培工程の全体像
まず、きのこの栽培工程ざっと見てみましょう。以下に図解しました。
きのこ栽培の工程は、大きく分けて次の2つがあります。
①種菌を準備する
②実際に栽培をする
①は、「種菌は買うから自分では作らない」という人には不要な工程です。こちらでしか使わない設備類もあります。つまり、本当に最低限必要なものは②で使う道具や環境です。
では、それぞれどんなものが必要なのでしょうか?一覧形式で見てみましょう。
栽培に必要な設備、道具の一覧表
★は自作できます(リンク先参照)
工程 |
必須 |
あると便利 |
余裕があれば |
---|---|---|---|
培地づくり~殺菌 |
培地材料 ★栽培容器 殺菌設備(例:圧力鍋) |
細い棒 |
pHメーター |
接種 |
火元(例:アルコールランプ) 接種用スプーン ★種菌 |
★防塵ブース 消毒用アルコール |
|
培養~発生 |
霧吹き |
保湿材 (きのこの種類による) |
温度計・湿度計 加湿器 照明 |
種菌づくりのみ |
鋭いピンセット 寒天 種菌培地材料 |
メス |
殺菌灯 クリーンベンチ |
工程ごとに解説
培地づくり~殺菌
培地材料(必須)
本稿では解説なし。
栽培容器(必須)
既製品であれば、袋や瓶を使います。自作する場合は、耐熱性の材料を使いましょう。もれ郎は100均のタッパーを使って自作しました。
丸型の容器もあります。作り方は、【自作】小型のきのこ栽培容器を100均グッズで自作した(2号器) - さかなきのこで紹介しています。
殺菌設備(必須)
本ブログでは2020年12月現在、圧力鍋による高温高圧殺菌を推奨しています。しかし、代わりとなる方法は他にもあります。例えば、培地材料を消石灰に漬ける方法などです。代替方法は未検証のため、もれ郎が自信をもっておすすめすることができません。もし状況が変われば、この記事大きく更新したいと思います。
きのこ栽培用の培地の殺菌方法。圧力鍋で培地を殺菌しよう! - さかなきのこ
細い棒(あると便利)
これは、培地に接種孔をあけるのに使います。接種孔とは、容器につめた培地の中央にあける孔のことです。菌糸が培地下部からも生えることで菌糸が全体に生長する期間を短縮する役割をもちます。
詰めた培地に突き刺して使います。棒の直径は、接種した種菌が余裕をもって落ちるくらいであれば十分です。直径1cmくらいでしょうか。割りばしでは少々細すぎますが、突き刺した後にぐりぐりやって孔を広げればそれでも十分です。もれ郎は試験管のお尻を使っています……(非推奨!!)
pHメーター(余裕あれば)
培地のpHを測りたいような、極めて探求心の高い方は持っていてもよいでしょう。培地材料の検証をするときには役立ちます。使い方はそのうち解説します。
接種
火元(必須)
接種用スプーンを炙り、火炎滅菌するのに使います。アルコールランプあたりが手に入りやすいです。
接種用スプーン(必須)
火あぶりにするので金属製推奨です。マドラーみたいな柄が長いものが便利です。もれ郎は100均のマドラーを使っています。
防塵ブース(あると便利)
接種作業は無菌操作、つまり雑菌が少しでも入ってはいけない慎重な作業です。ここ雑菌が入ると取り返しがつかないので、特に慣れないうちはリスクを下げるためにも用意したほうが良いです。もれ郎はプラダンで自作しました。
消毒用アルコール(あると便利)
接種環境を消毒したり、炙ったスプーンを冷やす用途であったりで使います。これはほぼ必須レベルです。
培養~発生
霧吹き(必須)
培養が完了した後に、培地やきのこの乾燥を防ぐために使います。もれ郎は100均で買いました。
保湿剤(あると便利)
赤玉土がよく使われます。培養が完了した培地の上に乗せて、培地表面が乾燥しないようにするためのものです。きのこの種類によっては使いません(シイタケとか)。赤玉土も100均で買えます。
加湿器(余裕あれば)
培養~発生まで広く使えます。もれ郎は持ってないのですがとても欲しいです。
照明(余裕あれば)
本稿では解説なし。
種菌づくりのみ
種菌培地材料(必須)
栽培用の培地材料でも十分です。もれ郎は、きのこに分解されないという理由でバーミキュライトを使用しています。
種菌培養用の容器(必須)
栽培用の容器でも十分です。もれ郎は以前、遠沈管という妙なものを使っていました。原菌と種菌兼用の容器も100均グッズで自作できます。作り方は【自作】きのこの菌糸培養に使うシャーレの代用品を考案した【1個30円未満】 - さかなきのこに書きました。
鋭いピンセット(必須)
きのこの組織分離をするときに使います。メスとペアでもいいですし、メス単体でも可能ですが、どちらか1つといわれればこちらです。先が鋭いと、細かなきのこの破片をつまみとるときに便利です。100均にちょうどいいのが売っています。
寒天(必須)
きのこを組織分離して、純粋培養するときの培地材料として使います。寒天は粉末のほうが便利です。
メス(あると便利)
きのこの組織分離をするときに使います。ヒラタケのような繊維質が強いきのこの場合、ピンセットだけだと組織分離に難儀します。そんなときには、メスがあると便利です。メスは100均では売っていませんね、さすがに。
殺菌灯(余裕あれば)
使い方を間違えると危ないので、もし使う際には気を付けてくださいね。ぶっちゃけ不要です(もれ郎はもってません)。
クリーンベンチ(余裕あれば)
防塵ブースより安全に無菌操作ができます。数十万円します。まあ不要でしょう。なお、頑張れば自作できるようです(もれ郎には無理でした)。
蛇足。『きのこ栽培キット』の正体
突然ですがここで問題です。きのこ栽培キットでは、上の図の栽培工程の中のどの部分を体験しているのでしょうか。
……
はい、正解は下の図の赤枠部分です。
栽培キットというのは、きのこの栽培工程のほんの一部を切り取った商品です。『きのこ収穫キット』といっても差し支えないでしょう。だからこそ、家庭で1からきのこ栽培をしようと思ったときに、栽培キットでは必要がなかった設備や道具あれこれが必要になってきてしまうのです。
ちなみに、もれ郎は栽培キットを批判する気はありません。ただでさえ一般消費者から縁遠いきのこの栽培を家庭レベルで浸透させたという意味で、栽培キットはとても大きな役割を担ってくれていると思っています。
もれ郎が気に入らないのは、現在のきのこ栽培工程そのものです。いくら安価で自作できるとはいえ耐熱タッパーで容器を自作したり、圧力鍋で殺菌しないと家庭菜園的な栽培が成立しないようなハードルの高さに、もどかしさを感じています。自分で紹介していて「これは無理があるよなあ……」とか思っているのも事実です。
「さかなきのこ」では、本稿のように家庭でできるきのこの栽培情報の発信の他に、このようなきのこ栽培の家庭菜園化におけるハードルを破壊するという裏目標をもって運営しています。まだまだ道のりは遠いですが、情報発信と同時にそのような開発も進めていきますので、ほんのりとご期待ください。
https://sakanakinoko.hatenablog.com/entry/20210704/1625383548sakanakinoko.hatenablog.com
もれ郎