【失敗】土壌還元消毒法をきのこの培地づくりに応用してみたかった
数少ない、まったく新しい発想から生まれたものこそが本当のイノベーションを生むのでしょうが、それはまた別のお話。
どうも、元きのこ研究者のもれ郎です。
いきなりですが、培地づくりって面倒くさいですよね。特に殺菌という工程。
時間もかかるし、熱殺菌ならコストもかかってしまいます。野菜とかの栽培とは大きく異なる点の1つと言えるでしょう。
この記事では、その殺菌工程のイノベーションに挑んだもれ郎の苦い失敗談を語ります。
【目次】
土壌の消毒ときのこ培地の殺菌
みなさんは、土壌還元消毒法って知っていますか。
詳しくは土壌還元消毒の消毒メカニズムと実践事例(外部リンク)に書いてあるのですが、畑に薄いエタノールや小麦フスマなどの有機物を撒いたうえで空気を遮断して放置し、微生物等の作用で消毒するという、ものです。
これ、きのこの培地殺菌に応用できないかな、と思ったわけです。
きのこの培地は通常、圧力鍋等で高温殺菌します。この場合、培地はかなり殺菌された状態になっています。
一方、消石灰を使った殺菌方法というのもあります。消石灰の殺菌作用はそこまで強烈ではないため、この場合では培地中にはわりと微生物が残存している状態ではないかと考えられます。
噂によると、無菌でない適度な殺菌状態であれば、あまりコンタミしないようです。(文献見つけたい)
もれ郎は以前電子レンジで殺菌した培地と種菌をたらいで混ぜたことがありましたが、見事にコンタミしまくって失敗しました。あれはつまりそういうことみたいです。
さて、土壌還元消毒法はどうでしょうか。「消毒」というくらいなので、おそらく土壌は完全には殺菌されていないでしょう。
さらに、きのこの培地は有機物なので、わざわざエタノールを加えるまでもなく手順を再現できそうです。
つまりもれ郎が考えたのは、土壌還元消毒法を応用して次の手順できのこ培地を消毒して栽培できないだろうか、ということです。
2. 培地をビニール袋で2週間くらい密閉する
3. 培地を袋から出す
4. たらい中で種菌とまぜて接種する
5. 通常どおり栽培する
というわけで、実際にやってみました。
きのこ培地還元消毒法の手順
1.培地を調製する
今回の培地は次のような配分でつくりました。
・コーヒーかす 540mL
・米ぬか 180mL
・水 300mL
コーヒーかす:米ぬか=3:1(体積比)です。米用の計量カップで計っています。水の量は、にぎり法でちょうどよくなる程度の分量ですが、時期や材料によって適量が異なりますのでご注意ください。
2.培地をビニール袋で2週間くらい密閉する
つくった培地をスーパーにある薄いビニール袋に詰め、室内の発泡スチロール箱の中で13日間放置しました。ここからは写真で培地の変化をお楽しみください。
どんどん、謎の菌が増えて表面が黄土色になってきます。
ちなみに、臭いです。発泡スチロール箱に入れていなければ、もれ郎は非難を浴びていたことでしょう。薄いビニール袋を使ったので匂いがもれてきています。
この匂いを例えるのであれば、ふんわりとした銀杏の匂いです。これは空気が遮断された状態から出そうな匂いなので、個人的にはいい兆候と思っていました。
3. 培地を袋から出す
いよいよ御開帳です。匂いがぐんと強くなります。例えるなら、銀杏のおばけが花束を抱えて襲いかかってきた、そんな感じの匂いです。そう、ちょっとフローラル系の香りがするのです。
また、培地の見た目は意外とコーヒーかすっぽさが残っています。黄土色なのは表面だけのようですね。そして、培地の水分が若干飛んだ印象を受けました。
ちなみに、この作業は換気の効いた部屋でやることを強く推奨します。それでも30分くらいは匂いがとれません。
4. たらい中で種菌とまぜて接種する
手早くよく混ぜます。たらい自体は、さっと水洗いした程度です。
5. 通常どおり栽培する
栽培容器もさっと水洗いした程度です。ちなみに、容器にいれてからはほとんど気にならなくなりました。
結果
惨敗!!!
考察
この方法は、きのこ培地向けの消毒としては効果不十分の可能性があります。さらには、消毒のポテンシャルが活かしきれていないという線も考えられます。
空気が遮断できていない(対策:ポテチの袋を使う等)
放置期間が短い(対策:我慢して待つ)
元になる微生物が少ない(対策:堆肥入れる)
↓
消毒に必要な微生物が増えていない
↓
効果不十分
まあ、効果が発揮できていたもダメな可能性もありますけどね……。
とりあえず、再挑戦の前に練習として消石灰による消毒を試したいと思います。それでダメなら、もれ郎は1から修行しなおすのです。
もれ郎