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どこできのこを育てればいいの?押さえるべき5つのポイントやおすすめの場所をご紹介!【培養編】

きのこを育てる場所, 5つのポイントとおすすめの場所, 培養編

「家にきのこが生えた!」と聞くと不衛生な印象かもしれません。
でも、管理してきのこを育てているのであれば話は別。
むしろ清潔で洗練された生活スタイルを体現できている証明です
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どうも、元きのこ研究者のもれ郎です。


家庭できのこを育てようと思っても、どこで育てるべきかわからない方はけっこういらっしゃるのではないでしょうか。


そもそも、きのこって暗くてジメジメしたところに生えるイメージが多いですよね。某マンガでは押し入れに詰め込まれたパンツからきのこが生える描写があったりするくらいです。


あるいは、もっと詳しい方の場合は別の疑問にぶち当たるかもしれません。例えば、栽培キットで興味を持たれた方の場合、栽培キットでは一切スキップされている培養の工程があります。「培養?全然やったことないからわかんないよ」とお手上げということもあるかもしれません。さらに、種菌の接種の際は無菌操作をしたりするので、それを知っている方ほど「培養もよっぽど気を遣わないといけないのではないか」と不安になるかもしれません。


もしや、大事なあなたのご家庭に、ジメジメとした陰気でありつつも埃やカビの類は一切存在しない超クリーンな空間という奇天烈な環境を作りださないと、きのこは栽培できないとでもいうのでしょうか。


結論、そんなことないです。ご家庭は特に無理やりきのこに合わせるようなことをせず、普段通りの状態のままでも十分きのこを培養、栽培することができます。むしろ、きのこを管理して育てられるご家庭は清潔で整頓されゆとりがあり、住環境として快適であるほうが適しているとも言えるでしょう


一体どういうことなんでしょうか。本記事ではそんな疑問を解決し家庭きのこ栽培を成功に導くべく、きのこの培養環境について押さえるべきポイントと、おすすめの場所を紹介したいと思います。


なお、本記事は培養編です。菌糸を育てるまでの工程がフォーカスになります。培養が完了してからきのこを発生させるまでは若干ポイントが異なるので、発生編は別記事にてご紹介します。

培養工程
本記事のフォーカス


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理論編:まずはきのこの培養環境についてポイントを押さえよう


おすすめ場所をご紹介する前に、なぜその場所がおすすめなのか理解できるようにポイントをまとめてみました。


「いいからさっさと教えてよ」と思われるかもしれません。でも、もれ郎と考え方を共有するためにあえて書きます。これは皆さんが失敗しないためにも重要な話です。


例えば、後に出てくるおすすめ場所「お風呂場」を例に挙げてみましょう。一口にお風呂場と言っても、広さや窓の有無、使用頻度などの環境は家庭ごとに異なります。


したがって、もれ郎が「お風呂場がおすすめです」と言っても、実はきのこ栽培には向かないお風呂場をお持ちの家もあるとおもいます。それにもかかわらず、「お風呂場」が一人歩きしてしまい失敗してしまうのはとても残念なことだと思います。


そういうことを避けるため、面倒かもしれませんが理論として基本的なポイントを押さえてから入ろうということです。


ということで、さっそく見ていきましょう。

人が過ごせる程度の温度(重要度:★★★)



きのこの生長温度はきのこ種によってまちまちです。公開されているきのこ栽培マニュアル20℃から24℃くらいなら大概は大丈夫そうな感じです。つまり、人が過ごす環境で培養していれば、まず問題ないです。実際、もれ郎の家では一年中きのこ菌糸を培養できています。


関連記事:【家庭きのこ栽培】無料で手に入るきのこ栽培マニュアルを集めてみた - さかなきのこ


温度が適当な域を多少外れたくらいであれば、生長が若干悪くなるくらいで済みます。しかし、だからといって油断して極端な温度で培養してしまうのは避けなければいけません。


温度が適温を大きく外れてしまうと、きのこは死んでしまいます。そういう意味で温度は結構重要な要因だと言えます。


ですから、夏に室温が40度を超えてしまうような屋根裏部屋や倉庫で培養したり、逆に冬に氷点下になるにもかかわらず屋外で培養するのは避けたほうがよいでしょう。


そこさえ押さえておけば、温度についてはあまり神経質になる必要はないと思います。

極端に乾燥していないところ(重要度:★★★)



きのこの培養に適当な湿度は、60%くらいと言われることが多いようです。菌糸そのものは乾燥に弱いですが、栽培容器が湿度を保つ働きをしてくれるのでこのくらいで大丈夫ということなのでしょう。


60%という湿度は、我々人間にとっても快適な湿度の範囲内だと思います。快適な環境は、湿度40~60%*1という説もあります。これ以上湿度が高いと、カビやダニが発生しやすいとか。


そのため、無理に加湿するのではなく、快適な部屋作りの中で高めの湿度を維持していれば問題ないでしょう。住宅用の加湿器をつけておくくらいで大丈夫だということですね。

換気が利く(密閉されていない)ところ(重要度:★★★)



より正確に言えば、きちんと換気が利き、二酸化炭素濃度が高くならない環境であることです。


菌糸も呼吸をします。そして、二酸化炭素濃度があまりにも高いと生長に悪影響が出るようです


例えば、ヒラタケでは、二酸化炭素が5~20%存在する雰囲気中より、二酸化炭素濃度が30%存在するほうが菌糸の生長は鈍いとの報告があります(ちなみに、二酸化炭素が除去された雰囲気中も30%とほぼ等しく生長が悪かったとのこと)*2


この30%というのは、栽培容器の中の濃度です。家がこの濃度(300,000ppm!!)になったら大変なことです。厚生労働省の建築物環境衛生管理基準では、建築物では CO2 濃度を 1000 ppm(0.1%) 以下に保つよう定められていますので、家でもこまめに換気している場合は大体このくらいの数字になると思います。


そして、きのこの培養工程では、大概のきのこで3,000ppm(0.3%)未満の二酸化炭素濃度にすることが求められます*3。栽培容器の中を適切な二酸化炭素濃度に押さえようとすると、これくらいが許容範囲ということなのだと思います。でも、建築物の基準よりだいぶゆるくてOKですね。


なので、我々普通の生活環境であれば、換気が問題となることはほとんどないでしょう。一方、我々が普段生活しない場所、例えば収納の中とかで培養する場合は、ちょっと気を付けたほうがいいかもしれません。


ちなみに、いくら換気が良いからといって培養中に家の外で野ざらしにするのはおすすめしません。外気温や直射日光の影響で温度がめちゃくちゃになったり、雨風が当たりコンタミのリスクが増えまくるなど良いことなしです。

暗いところ(重要度:★★☆)



きのこの菌糸を培養する場合は、なるべく暗いところのほうが良いです。でも、あまり神経質にならなくてもいいというのがもれ郎の結論です


まず、光が当たってしまうことの影響を考えます。きのこの菌糸は培養時に光をあてると、影響がないか生長が悪くなることがあるとされています。また、光はきのこの発生刺激であるため、もう少し培養したののにきのこが生えてきてしまうといったことも起き得ます。


一方で、暗さにこだわってしまうと別の問題もあります。例えば、きのこ種によっては光がないと培養がうまくいかないものも存在します(たとえば、シイタケ)。そして、暗黒を目指すあまり余計なスペースを確保する必要が出たり、密閉度が高くなり酸欠になったりする可能性もあります。


そんなことになるくらいだったら、暗黒にはこだわらずそこそこ暗いくらいを目指すくらいで十分ではないかと思います。


我々はプロではなく、しょせん趣味の範囲できのこ栽培をするのですよね。完璧をめざすのではなく、それなりの環境で気軽に楽しく栽培できるほうがよっぽど重要だと思うのです。


なので、照明が常時ONの所では培養しないとか、あえて光をあてない(シイタケ除く)とか、窓際は避けるとか、その程度で十分だと思います。

それなりに清潔なところ(重要度:★★☆)



培養環境の埃が多かったりして不潔だと、いくら栽培容器で栽培していたとしても雑菌混入(コンタミ)のリスクが上がります。


栽培容器をきちんと密封していない場合は特にそうですし、そもそも栽培容器のフィルターだって万能ではないためです。


どの程度の清潔さが良いかというと一概には言えませんが、まあ定期的に掃除する場所なら問題ないでしょう。綿埃とか砂埃は無い、カビたもの(コンタミした培地とかもですよ!)が近くに存在していない、その程度であれば問題ないのではないでしょうか。


実践編:ご家庭でおすすめ場所は?


これまで、理論編ということでいくつかのポイントを紹介してきました。それでは、実際に家の中できのこの培養場所としておすすめの場所はどこになるのでしょうか。見ていってみましょう。

普段生活する部屋に近接する収納の中



温度や湿度は部屋の空調を受けて適度です。そして暗いという観点でおすすめです。


換気面は家によって大きく異なるはずです。気になるようであれば、二酸化炭素濃度計を購入しモニターしてみるのがいいでしょう。


ついでに整理整頓し清潔にしておけば完璧です。「きのこ栽培を始めたおかげで整理整頓まではかどっていいことづくめであるなあ」と家族にも好印象を与え、家庭円満に寄与することでしょう。

風呂場、脱衣所



使う時には一瞬高温になりますが、湿度は高く保てます。いつも電気をつけるような場所ではないので、暗さも適度なことが多いのではないでしょうか。わざわざつける必要もないでしょうけれど、換気扇もありますしね。


ついでにこまめに掃除し清潔にしておけば完璧です。「きのこ栽培を始めたおかげで風呂場がいつもぴかぴかでいいことづくめであるなあ」と家族にも好印象を与え、家庭円満に寄与することでしょう。



注意点として、水がかかるような所には置かないようにしましょう。コンタミの原因になります。

靴箱



暗いのでおすすめです。温度や湿度もたぶん常識的な範囲内でしょう。靴箱ってあまり密閉されているイメージがないので、換気も問題ない気がします。


ついでに靴の手入れも含め清潔にしておけば完璧です。「きのこ栽培を始めたおかげで靴箱が臭くなくなった上、靴の手入れも行き届いている。まったくいいことづくめであるなあ」と家族にも好印象を与え、家庭円満に寄与することでしょう。



逆に、どろどろぐちゃぐちゃな靴がたくさんあるような家であれば避けるほうが良いです。あとは、心理的にオーケーな人向けですかね。空きスペースが確保できそうな場所として。

普段生活する部屋に専用スペースをつくる



空きスペースを活用して、100均DIYやメタルラックできのこ栽培スペースを構築しましょう。もれ郎は過去、100均のワイヤーネットで簡易栽培棚をつくったことがあります。これは極めて安価かつ省スペースなのでおすすめです。もれ郎が実際につくったものがあるので、やってみたい方は【自作】100均グッズできのこ栽培棚をつくってみた【製作費1000円未満】 - さかなきのこをご覧ください。

おわりに:きのこというわくわくに囲まれて暮らそう


ここまで読んでお分かりになったと思いますが、きのこは家の大体の場所で培養できます。逆に言えば、そこら中できのこを培養し、きのこ(菌糸)に囲まれて生活することも可能です。


食品としてのきのこ(子実体)は数日部屋に飾って置いておけば萎びたり腐ってしまいますが、菌糸なら数週間、数か月というスパンで愛でることができます。何より、菌糸が伸びていく様子を観察するのはとても楽しいです。


思い出してみると、小学校の頃に、アサガオを育てていた時の感覚に近いですかね。当時は植物なんてあまりそだてたことがないので、双葉が出て本葉が出てくる様子や、つるが支柱に巻きついていく様子を見ているだけでもわくわくする。


きのこを育てるって、そういうわくわくを身近に置いておけるということです。食べるのはおまけです。


あなたも、きのこで日常をちょっと楽しくしてみませんか。



もれ郎