さかなきのこ

元きのこ研究者による、きのこ栽培の魅力発信ブログ

きのこの種菌の買い方を解説。どこで何を買えばいいの?気を付けることは?

きのこ種菌の買い方 どこで買う?気を付けることは? ガイドライン

きのこの種菌って店で売っているのをほとんどみませんね。
植物の「種」とは違い休眠しておらず、保存に向かないからだと思います。
将来的には100均の家庭菜園コーナーで気軽に買えるようになればいいのですけどね。
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どうも、元きのこ研究者のもれ郎です。


今日は種菌の買い方を解説してみたいと思います。


もれ郎はわかります。あなたは「きのこの種菌をつくるのが面倒くさいなあ」と思っていますね?


当ブログ「さかなきのこ」では、自分で1から作れる種菌の作り方をご紹介しています。しかし、やり方はわかっても最初の技術的なハードルは低くないですし、自分で作ることの面倒くささも認めます。あるいは、作ろうとしてみたけど失敗つづきなので「種菌を自分で作るのは無理だなあ」という方もいらっしゃるかもしれません。


関連記事:きのこの種菌の作り方を解説!(材料、方法、注意もあるよ) - さかなきのこ


そこでたどり着くのが「もう種菌は市販品を買お……」という結論です。


でも、きのこの種菌ってなかなか売ってないんですよね。ホームセンターとかに売っていればいいんですけど、取り扱いがあることは稀です。しかも、そもそも家庭で種菌からきのこを育てる情報があまりに少ないので、どの種菌を使えばいいかわからない


もれ郎も実は最近きのこの種菌を買ったのですが、同じような悩みに直面しました。きのこの種菌って、大手ネット通販サイトでも取り扱いがほとんどないんですね。もれ郎はどの種菌を使えばいいかはイメージできていたので何とか購入まで辿りつけましたが、みなさんにこんな手探りショッピングをさせていたことにショックを受けました。こんな状況では、せっかくの家庭きのこ栽培のやる気を削いでしまうに違いありません。


そこで、もれ郎はこの状況を変えてみようと思います。


今回の記事では、実際にもれ郎が種菌を購入する際に調べたりした情報を元に、「どこで種菌を買えばいいのか」「何に気を付けて買えばいいのか」をご紹介してみたいと思います。


家庭できのこ栽培をしたいけど、種菌づくりからだと面倒くさすぎるよ、と思っているそこのあなた。本記事を読んで、第一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。

そもそも種菌ってなに?


きのこ種菌のラベル


念のため、基本的なところに触れておきたいと思います。きのこ栽培における種菌ってなんでしょうか。


種菌とは、あらかじめ菌糸を目的の菌を生長させてある物体です。培地に「種」のように植え、そこから菌を生長させるために使います。


生きたきのこの菌糸が生えたものであればなんでも良く、通常はおがくずや穀物に菌糸を生やしたものを使いますが、もっと大きな木片を使うこともあります。他にも、液体種菌といって菌糸を液体ごと接種したりすることもあります。ヨーグルトの種菌なんかはこのイメージですよね。


余談ですが、植物の「種」は、次世代の個体をつくる元となるものです、きのこに当てはめると「胞子」に近いです。ただ、きのこの胞子って種菌としては使わないようですね。できないことはないんでしょうけれども、無菌的に扱うのが難しかったり、多くの種で胞子は半数体(つまり、花粉みたいなもの)なのでどこかで交配させないといけなかったり、扱いづらいことが理由かもしれませんね。


さて、話を戻しますが、菌糸が生きてさえいればなんでも種菌にすることができます。つまり、「種菌」として売られているものでなくても、生きている菌糸を買えれば、実際には種菌として使うことができてしまいます。したがって、みなさんが種菌を探すときは菌糸が生きている商品を探せばよいということになります。


ご理解の早い方はここまで読んで「ああ、じゃあ寒天培地に生やした菌糸や、無菌のきのこ片を種菌にしてもいいのね」と思われるのではないでしょうか。その通りなのですが、もれ郎としてはおすすめはしていません。理由を解説した記事を書いてありますので、【FAQ】きのこの欠片から直接きのこ栽培や種菌づくりができますか。 - さかなきのこをご参照ください。

種菌として使えるものは?


さて、ここまでのポイントは「生きている菌糸を買う」でした。それでは、実際にみなさんが入手できるもので種菌として使える商品にはどのようなものがあるのでしょうか。もれ郎が調べてみて見つけたものをご紹介します。

種菌として売られているもの


きのこの種菌瓶


ネットで調べると、少ないながらもネットで買える種菌があります。おがくず種菌の他、種駒(たねこま)という弾丸みたいな形の木片に菌糸を生やした種菌も売っています。種駒は原木栽培用の種菌ですね。

菌床・栽培キット


きくらげ栽培キット


栽培用のきのこ菌床や、栽培キットの菌床・栽培ブロックも種菌として使うことができます。栽培キットの場合は「別の用途に使わないでね」といった旨の注意書きがあったりするので、あまりおおっぴらにはやらないほうがいいですね。

クワガタ用の菌糸瓶・菌糸ブロック


菌糸ブロック


菌糸瓶や菌糸ブロックってご存知ですか?もれ郎は知らなかったのですが、クワガタの幼虫を育てるのに使う、エサ兼住み家みたいなものらしいです。いいな、もれ郎もラーメンでできた家に住みたい……。


この菌糸ブロックですが、なんと食用きのこであるウスヒラタケをきのこ種として使っているものがあります。中には"オオヒラタケ"という商品名で売られているものもあるのですがたぶんほとんどがウスヒラタケです。ちなみに、オオヒラタケというきのこ種も存在しますが、こいつは培養すると黒い汁(分生子:ぶんせいし)が出てきてキモいので一発でわかります。

どこで買えるのか


さあ、種菌として使えるものがわかったところで、早速探してみましょう。主に以下の2つの方法で探すことになると思います。

amazonや楽天で探して買う


ネットショップのイラスト


検索してみると、たまに種菌が出てきます。もしお目当てのものが売っていれば、ここで買うといいでしょう。


ただ、ほとんどがクワガタ用の菌糸瓶・菌糸ブロックなんですよね。使えないこともないんですけど、きのこ栽培用に最適化された品種ではない可能性があるというのがネックです。


ちなみに、種菌メーカーの種菌も売っていますが、ほとんどが原木栽培用の種菌です。そんなあ……。

種菌メーカーから買う


ということで、本命はこちらです。Amazon、楽天に取り扱いが無い種菌メーカーの種菌は、メーカーから直接購入することができるものがあります。


ネット通販と、電話等での注文販売の2通りがあります。


ネット通販を行っているメーカーはほとんどありません(もれ郎はとても残念なことだと思います)。ネット通販で入手できるのは「振興園」「日本農林種菌」の2社です。


振興園は、シイタケ等のメジャーなきのこの他、ヒラタケやウスヒラタケといったマイナーなきのこの種菌も売っています。日本農林種菌は、通年で売っているのはマッシュルームだけっぽいです。


その他のメーカーですと、「キノックス株式会社」「株式会社千曲化成」あたりは、電話等で注文することができます。個人でもきちんと買えるようです。


ウェブショップ振興園おちゃのこ店
日本農林種菌㈱ご注文・問合せ
きのこ種菌|株式会社キノックス
きのこ種菌の開発・製造・販売から栽培技術指導まで! 株式会社千曲化成

もれ郎のおすすめ:種菌購入のガイドライン


もれ郎のきのこ種菌購入ガイドライン


ここまで、種菌の購入にまつわるいろいろなことをご紹介してきました。では、実際にはどの販売元から、どのような考え方で品種を選べばいいのでしょうか。


先に言っておくと、きのこ種については好きなものを選べばいいと思いますし、品種も栽培方法で向き不向きがあるはずなので「この品種がおすすめ」と言及することはできません。もれ郎、そんなたくさん栽培したことないですし……。


なので、これからお伝えすることは、家庭できのこ栽培を楽しむにあたり、種菌を購入する際のガイドライン的なものだとご理解いただければと思います。

製造販売元が種菌メーカーであるものを選ぶ


いうまでもなく、種菌メーカーは出所として信頼できるのでお勧めです。種菌としての品質(害菌の混入とか)は間違い無いと思いますし、栽培用きのこの品種を売っているはずなので、栽培成績も優れている……少なくとも大外れは無いと思います。

登録品種や品種登録出願中ではない品種を選ぶ


種苗法がらみの観点です。家庭きのこ栽培は個人的・家庭的な範囲であれば問題ないものの、間違って人にきのこをあげてしまうとだめ(育成者権を侵害する)なので、安全のために登録品種ではないものを使うのがおすすめです。


品種登録をされていないものや、育成者権の保護期間(品種登録から25年)が切れた品種です。種菌には品種名が書いてありますし、その品種が登録品種であれば容器等にその旨の記載があるので判別できます。自信がなければ、農林水産省の品種登録迅速化総合電子化システムを見て自分で調べることもできます。


ちなみに、品種登録出願中の品種についてもやめておくのが無難です。育成者権の侵害にはなりませんが、補償金の支払を請求される可能性がある(種苗法第14条)からです。


関連記事:【FAQ】市販のきのこの栽培、拡大培養は種苗法的に大丈夫なんですか? - さかなきのこ


自分が目指す栽培スタイルに近い種類の種菌・品種を選ぶ


みなさんが菌床栽培をしようとしているのであれば、オガ菌(もしくはオガ種菌)というおがくずが主原料の種菌を使うのがよいでしょう。もちろん、原木栽培をする場合は、種駒などが選択肢に入ります。マッシュルームの場合は穀粒種菌という穀物が主原料の種菌になりますね。


また、きのこ種よってはオガ菌もしくは種駒のいずれかでしか取り扱いがない品種があります。この場合は、自分がやりたい栽培方法に近い品種を選ぶのが無難だと考えます。ここからはもれ郎の推測ですが、種菌メーカーは各栽培方法に最適化した品種を育成しているはずなので、例えば原木栽培用の品種を菌床栽培で使っても栽培成績がイマイチになってしまう可能性があるためです。


みなさんが目指す栽培スタイルに近い種菌・品種を購入してみることが重要です。

おわりに:種菌を買ってしまえば家庭きのこ栽培は超楽ちん


本記事では種菌を購入するまでのあれこれを書いてみました。


みなさんも、どうやって種菌を買えばいいのか、なんとなくわかっていただけたのではないでしょうか。


種菌さえ購入できてしまえば、その先の家庭きのこ栽培は楽ちんです。


種菌は多めに接種すれば、接種操作時のコンタミで失敗するリスクをある程度カバーすることができるためです。


種菌を購入して家庭きのこ栽培の醍醐味を味わってから、本格的に種菌づくりにチャレンジするというステップがおすすめです。そして、途中でよくわからなくなれば、当ブログを何度も読み返したり、もれ郎にDMで質問をしていただければと思います。ぜひ挑戦して、他の人とはひと味もふた味も違う本格きのこ栽培ライフを楽しみましょう。



もれ郎