さかなきのこ

元きのこ研究者による、きのこ栽培の魅力発信ブログ

きのこの分離操作を解説!自分で種菌を作れるようになる方法【組織分離】

どうも、元きのこ研究者のもれ郎です。

 

 

今日は種菌を自分で作るために必要な手順、組織分離について触れたいと思います。

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突然ですが、みなさんは買ってきたスイカの種を庭に蒔いて育てた経験はありますか。

 

 

もれ郎は……ありません。庭なしの家で育ったので。でもきっと楽しいんだろうなって思います。なんか変な形のができたり、でも思ってたより美味しかったり。

 

 

苗を買うわけでもなく育てられて、なんか得した気がしますよね。もれ郎はそういうの大好きです。豆苗のリボベジとかも好きですね。

 

 

さて、きのこはどうでしょう。

 

 

苗にあたる栽培キットは売ってます。でも、きのこのリボベジなんて聞いたことないですね。

 

 

実は、きのこは「きのこ」さえあれば良いのです。種(種菌)を作り、そして栽培することができます。

 

 

そのためには、きのこの本体である菌糸を、雑菌がいない環境に取り出して育てる必要があります。

 

 

これを、分離操作といいます。

 

 

分離操作としてよく使われる方法のうち、今回は組織分離について説明したいと思います。

 

 

それでは、早速みていきましましょう。

 

 

★注意:きのこの組織分離は種苗法で保護される育成者権を侵害する可能性があります。利用範囲には十分気をつけてください。

 

【目次】

 

用意するもの

  • きのこ
  • 培地(NITEのサイトが参考になります)
  • 火元(アルコールランプとか)
  • ピンセット
  • メス(無くても良い)

 

 

方法

 

1きのこを手に入れる

 

 

新鮮なきのこを手に入れましょう。買ったものでも、採ったものでも良いです。野外で採る場合は、きれいなものがよいです。泥などで汚れないよう、「いしづき」や傷んでいる部分を切り落として運ぶと良いでしょう。

 

 

※きのこは平和的かつ公正に入手しましょう。他人の山に入ってはいけませんよ。

 

 

1.5手を洗う

 

 

とても大切なことです。洗ったあとは、ホコリが出にくい紙や布で手を拭いて、できればアルコール消毒もしておきましょう。

 

 

2.アルコールランプに火をつける

 

 

火炎で上昇気流を発生させて、雑菌の胞子が培地やきのこにつかないようにします。また、火炎滅菌(火あぶりで雑菌を殺す)の火元を兼ねます。

 

 

以降の操作は、火の近くで行いましょう。

 

 

ここからはイラスト解説(笑)つきです。

 

3.きのこを裂く

 

 

内側面を出します。内側には雑菌がいないので、ここから欠片(組織片)を取り出すのです。



 

4.メスで切り出す

ピンセットでつまみ取れるよう、火炎滅菌したメスで1mmくらいの大きさの欠片を切り出します。きのこであればどこでもいいです(一部例外あり)が、傘のところが良い気がします。

 

裂いたきのこ



 

5.ピンセットで欠片をつまむ

4.の欠片を、火炎滅菌したピンセットでつまみとります。4.を飛ばしていきなりつまみとったり、4.からメスだけつかって欠片をとってもOKです(もれ郎は基本これ)。

 

きのこの欠片を取り出した

 

6.培地に欠片を置く

 

 

寒天培地上にきのこの欠片が載っている

 

 

あらかじめ準備した培地上に、欠片を載せます。かっこよく言うと載置します。使用する培地は何でもいい場合と、菌根菌(マツタケとかポルチーニとかです)などのように組成に気を使う場合があります。

 

 

寒天培地の作り方は、【家できのこ栽培】寒天培地の作り方。きのこの菌糸を培養しよう! - さかなきのこでご紹介しています。

 

 

7.培養する

 

 

寒天培地上のきのこの欠片から菌糸が生えている

 

 

適当な環境で数日間培養します。きのこにもよりますが、5日程度経って欠片から菌糸が生えていれば成功です。

 

 

無菌操作のコツ

 

 

これらの操作は、純粋な菌糸を得るために行っています。そのため、操作中に変なところに触れたり、息を吹きかけたり、浮遊しているホコリや胞子がつかないようにしなければなりません。

 

 

このような操作を無菌操作と言います。

 

 

無菌操作の基本は、きれいな環境で行うことと、操作を素早く行うことです。

 

 

作業机にホコリがあるのは言語道断。きれいに拭き取り、部屋もきれいにしておきます。

 

 

それでも、作業時間が長くなるほどホコリや雑菌がふわふわと飛んできて、きのこや培地に付着する可能性が高まります。素早く、かつ丁寧にやりましょう。

 

 

大丈夫です。最初は勝手がわからないですから、よくコンタミします。また、慣れてもよくコンタミします。もれ郎は接種した培地の300個中100個以上をコンタミで台無しにした経験があります。あれには青ざめました。

 

 

あと、火炎滅菌後のメスなどはよく冷やしたほうがいいです。組織片が熱で死んでしまったら、菌糸は伸びてきません。

 

 

変な見た目の菌糸とか、変などろどろがでてきたら失敗かも

 

 

コンタミして緑色の菌が生えている

 

 

きのこが傷んでいたりすると、内側が既にカビやバクテリアに侵されていることがあります。

 

 

きのこの欠片から、緑っぽい菌糸ややたら細い菌糸が生えてきたり、白っぽいなどろどろが出てきたら、すでにきのこが傷んでいて失敗した可能性もあります。

 

 

最初はどれが変なので、どれが成功なのか見分けがつかないでしょうから、頑張って慣れてください。もれ郎のブログをたくさん読んで、成功してるっぽい菌糸の雰囲気を覚えましょう。

 

 

動画で組織分離を説明します(準備中)

 

 

もれ郎の説明能力の限界を感じたので、分離操作の動画を撮影してみました。

 

 

しかし、現在準備中です。もれ郎のPCが頑張って作業してくれています。最近さすがに限界を感じてメモリを4Gから12Gに増設してあげたんだから、頑張って動画を完成させてほしいものです。まったく。

 

 

★かれこれ一年ちかく動画準備中★

 

 

きのこの原菌をつくろう

 

 

今回ご紹介した方法を使えば、理論上あらゆるきのこの種菌をつくることができます。

 

 

あとは、得られた菌糸を使って種菌をつくるだけです。種菌の作り方は、

きのこの種菌の作り方を解説!(材料、方法、注意もあるよ) - さかなきのこ

に紹介しています。

 

 

さあ、みなさんも、ありとあらゆるきのこを家庭で栽培してみましょう!

 

 

 

もれ郎